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表面分析 /受託試験

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CSEM トライボメータによる硬質薄膜の特性評価

CSEM Application Bulletin - May 1997

序論

摺動部品の摩擦摩耗特性を制御する適当な方法を知りたいという硬質薄膜製造者からの要望が増えている中で、本アプリケーションノートではCSEMトライボメータを用いた無潤滑、潤滑環境下での材料ペアの日常的な摩擦摩耗試験を紹介する。

CSEMトライボメータは伝統的なピン・オン・ディスク試験であり、静止試験片としてボールや頭を切ったボール等も使用可能である。ピンは剛性のあるレバーにマウントされディスク状の試料の上に既知の精密おもりによって押しつけられる。ディスクは回転しピンとディスクの間に作用する摩擦力がレバーの水平方向の小さなたわみによって測定される。材料ペアの摩耗量はある回転数後の摩耗によって失われた材料の体積により計算される。 試料に残された摩耗痕は表面形状測定器によって断面形状が測定され摩耗量が求められる。

ボールオンディスク試験

図1 TiNコーティング試験片のボールオンディスク試験

結果

図2に440Cステンレス鋼上のMoS2コーティング膜の代表的な摩擦係数の推移曲線を示す。静止相手材は直径6mmの100Cr6(SUJ2)軸受鋼ボールである。連続的な摩擦力の記録は摩擦係数値が得られるだけでなく、摺動特性の変化をモニターすることができる。こうした摩擦係数の変化は表面特性と形態の変化や摩耗メカニズムの変化と関連づけられる。

図2の摩擦曲線は約200回転後に安定し摩擦係数が 0.02 から 0.15 に上昇している。これは本試験に典型的で初期なじみ(running-in)期間といわれ例えば酸化層といった表面汚染が破られる時間と考えることができる。かなり安定した摩擦係数で一定回転数が経過したのち、約 3500 回転でコーティング膜が破壊し摩擦係数がカットオフ設定値である 0.3 まで上昇している。コーティング膜厚と摺動寿命(総回転数であらわされる)にはしばしば相関関係が見いだされMoS2膜の場合は通常直線関係が得られる。

摩擦係数推移曲線

図2 軸受鋼ボールとMoS2コートディスクの代表的な摩擦係数推移曲線
(3500回転経過後被膜の破壊による摩擦係数の急激な上昇が見られる)

摩耗試験においては主要なパラメータである垂直荷重、接触面積、摺動速度、試験時間以外にもいくつか考慮すべき点がある。試験温度の試験片材料ペアの機械的特性に与える影響は非常に重要で、多くは摩擦による発熱であるが熱的に化学反応が活性化されることがある。潤滑システムではこうした発熱が潤滑剤の粘度に与える影響も考慮しなければならない。また水蒸気や酸素などの雰囲気中の活性成分はすべての材料にわたって摩耗速度やメカニズムに大きな影響を与える。

潤滑剤はほとんどの摺動システムにおいて摩擦を低減する強力な手段である。しかし別の要素も無視できない。 流体潤滑は摩耗係数 K が一般的に 10^-13 ともっとも低い摺動摩耗速度であるが、流体潤滑条件は永久に続かないので境界潤滑条件では K が 10^-6 と上昇し、更に境界潤滑が崩れ無潤滑での接触が始まると K は 10^-3 まで増加してほとんどの実用部品に適用不可能となる。

図3は工業的な硬質薄膜(ハードコーティング)の100Cr6(SUJ2)ボールを静止相手材として接触面圧 10MPa 時の摩擦係数である。潤滑剤 Motorex を用いるとすべてのコーティングで摩擦係数が大きく減少した。特に CrN が摩擦係数の低減が顕著でありこれはこの被膜が陰極アーク放電プロセスによりつくられたため空孔欠陥が多く潤滑剤の保持に有利に働いたためと推測される。さらに潤滑剤中の極圧剤の添加が貢献していると思われる。

各種硬質薄膜の摩擦係数

図3 相対湿度 50% で潤滑剤 Motorex 有無条件下での各種硬質薄膜の摩擦係数

比摩耗量比較

図4 異なる製造者による硬質薄膜の比摩耗量比較

図4に異なる製造者による各種硬質薄膜の比摩耗量比較を示す。基板の前処理としてポリシングとサンドブラストの2種類が用いられた。一般にサンドブラスト試料がよりよい密着性が得られボールとディスクの接触分布が異なるため比摩耗量が低減する。比摩耗量は摩耗痕の断面を表面形状測定器で測定し摩耗体積を求めた。図5に一例を示す。比摩耗量は摩耗体積を垂直荷重と摺動距離で割って求められた。比摩耗量は試験前後のディスクとボールの重量を精密に測定して求めることもできる。また摩耗痕近辺の摩耗粉の分析によって摩耗プロセスに関する重要な情報を得ることができる。

多くのシステムにおいて実験的に摩耗量は摺動距離に比例することが確認された。しかし比摩耗量と垂直荷重との厳密な関係を見いだすことは実際上かなり困難で、荷重を増すことで突然比摩耗量が増加するような現象がしばしば見られる。

ボール・オン・ディスク試験による典型的な摩耗痕の光学顕微鏡写真

触針式表面形状測定器による摩耗痕の断面形状 (断面積 = 2.82 x 10-3mm2).

図5 ボール・オン・ディスク試験による典型的な摩耗痕の光学顕微鏡写真と
触針式表面形状測定器による摩耗痕の断面形状 (断面積 = 2.82 x 10-3mm2).

結論

CSEMトライボメータは実用条件に近似的な環境下で摩耗試験をおこない新しい成膜プロセスを評価したり使用可能な材料ペアを選び出すのに有効な試験機である。摩耗試験は、支配する摩耗メカニズムを知り、摩耗プロセスの試験条件依存性を理解し、材料製造と材料構造特性や機能との間に相関関係を築くことではじめて役に立つものとなる。

CSEMトライボメータは既に信頼性の高い多機能な試験機として世界の100を越える研究所で使用されている。常に基本設計をよりよいソフトウェアとオプションによりアップグレードすることによって、この試験機が摩耗研究の最先端にとどまるよう努力する。今後のアプリケーションノートは、潤滑剤の研究や高温試験オプション、ピン/ディスクインターフェイスでの電流測定などの個別のテーマとなる予定である。T

関連文献

  • I. M. Hutchings, Tribology - Friction and wear of engineering materials, Edward Arnold, London, 1992
  • C. Mueller, C. Menoud, M. Maillat and H. Hintermann, Surf. Coat. Tech., 36 (1988) 351-359
  • J. P. Celis, Surf. Coat. Tech., 74-75 (1995) 15-22
  • H. Czichos, Tribology, a Systems Approach to the Science and Technology of Friction, Lubrication and Wear, Tribology Series 1, Elsevier, Amsterdam, 1978
  • S. Lim and M. Ashby, Acta Metall., 35 (1987) 1-24
  • F. F. Ling and C. H. T. Pan, Approaches to Modelling of Friction and Wear, Springer-Verlag, 1988

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