スクラッチ試験は、荷重をかけながらダイヤモンド圧子で試料表面を引っかき、膜の密着性や傷つきやすさの評価を行います。
スクラッチ試験は、テーブルの上に固定した試料にダイヤモンド圧子を密着させ、徐々に荷重を加えていき、同時にテーブルを一定の速度で移動させることで膜の密着性を測定します方法です。
垂直荷重(FN)とテーブルの移動により生じる摩擦力(FT)により、基板に成膜された薄膜にクラック(ヒビ)、カケ、割れ、剥離等の変形が発生します。
このスクラッチ痕の変形ポイントを光学顕微鏡等の観察により決定し、その変形ポイントでの垂直荷重を臨界荷重とします。
また、スクラッチ試験中に、基板に堆積されている薄膜の剥離やクラックに起因します破壊音をAE(アコースティック・エミッション)センサーにより検出できる試験機やテーブルの摩擦力センサーにより摩擦力も検出できる試験機もある。
顕微鏡観察によるクラック、カケ、剥離等と摩擦力の波形の急激な上昇やAEの波形の急激な変化とを合わせて考察もできます。
臨界荷重や測定結果(AE、摩擦力、スクラッチ痕)から機械的な強度や密着性を考察します。特に剥離臨界荷重は、工業的には薄膜の密着力として比較されることが多いです。
この試験を数回行い、その平均を密着力としてみることができます。
セラミック薄膜やDLC膜の密着性試験をはじめメッキ等各種コーティングの評価に利用されています。
スクラッチ試験の規格にISO20502は、テーブル上に成膜した基板を置き、その基板上にダイヤモンド圧子を密着させ、徐々に荷重を加えながら、同時に基板を一定の速度で移動させて密着力を測定する方法です。この時、AE(アコースティック・エミッション)センサーにより、基板に成膜されている薄膜の剥離やクラックに起因する破壊音を超音波として検出し、同時に摩擦力も検出することができる。スクラッチ痕の光学顕微鏡等による観察が評価ポイントの決定には必要であり、摩擦力の波形の急激な上昇とAE波形の急激な変化は、これらのポイントに関する参考として使用するように規定されている。特徴的なスクラッチ痕の剥離モードの例は、Annexに示されている。また、測定に使用する圧子の管理は重要であり、圧子の状態確認のためにDLC標準試験片が推奨されている。本規格は、1μm~数μmのDLC膜には最適な試験方法であり、工業的な品質管理として密着性を確認したい場合に有効です。
以下にスクラッチ試験機の写真(アントンパール社製RST3)と図を示します。
試験機名 | 説明 |
Revetest Scratch Tester | 荷重レンジ:1~200N
スクラッチ長 30mm以下 推奨試料サイズ:10mm~30mm角、t4mm~20mm ミクロンオーダーの硬質薄膜の密着性評価に使用 用途:TiN、CrN、TiAlN、TiCN等、DLC、メッキ、アルマイト処理 溶射被膜、酸化被膜、PVDコーテイング、CVDコーテイング |
CSR-5100 | 荷重レンジ:1~1,000mN
推奨試料サイズ:10mm~50mm角、t0.5mm~10mm 移動速度: Max 20μm/sec 加熱温度:150℃まで 振幅幅0、5μm、10μm、20μm、40μm、50μm、80μm、100μm スクラッチ速度(X軸方向):0.1~20μm/s 圧子を振動させながら試験を行うことで、軟質材料の評価が可能。 用途:ITO、TiO2、DLC、有機膜、ポリマー膜、SiO2膜、Si3N4膜、SiC膜、Al2O3膜、絶縁膜、金属膜(Cr・Ti・Au・Ag・Cu等)、Si基板上の各種薄膜、ガラス基板上の各種薄膜、プラスチック基板上の各種薄膜。反射防止膜、耐傷性評価、プラスチック 注:底部と測定面は水平でカット面にバリや変形が無い事。 JIS-R-3255準拠。 |
※Micro Scratch Tester、Nano Scratch Testerは故障中です。CSR-1000は現在試験所に保有しておりません。
CSR-5100 外観
CSR5100について※株式会社レスカのサイトへ